サムラッチ錠（さむらっちじょう）

サムラッチ錠とは、ヨーロッパ風の華やかな装飾が特徴的な錠前です。サムラッチ錠は欧米風の家屋や、昭和時代から平成にかけて建てられた住宅に多く使用されています。高級感のある華やかな見た目から、鍵業者の間では「装飾錠」や「アンティーク錠」とも呼ばれています。サムラッチ錠は、一般的なケースロック錠の扉と同様の仕組みで鍵の施錠を行いますが、解錠後の動作が異なります。サムラッチ錠は、鍵を開けたあとサムラッチハンドルにあるつまみ状の金具部分(ラッチ)を、親指(サム)で下に押しながら扉を引いて開閉するツーアクションが必要です。金具部分(ラッチ)が固い傾向にあるため、お年寄りや子どもには操作しづらいというデメリットがあります。

サムラッチ錠を構成しているパーツは、錠ケース、サムラッチハンドル、デッドボルト、ラッチボルト、シリンダー、サムターン、取付ネジ、ストライク、鍵プレートです。錠ケースとは、錠前の仕組みとなるパーツが収まっている金属製の箱であり、サムラッチハンドルとは扉施錠の一種です。サムラッチハンドルは、室外と室内側でデザインが異なるタイプがあり、とくに室内側は持ち手式のものが多いです。サムラッチ錠のデッドボルトは施錠するためのかんぬきであり、デッドボルトの下に配置されている三角のラッチボルトが錠ケースのなかに入っています。サムラッチ錠の錠ケースは、玄関ドアのなかに彫りこむケースロック型タイプと、玄関ドアの室内側の面に飛び出した形で錠ケースを設置する面付錠タイプがあります。室外側にある鍵を差し込む穴であるシリンダーと室内側にあるつまみのサムターンで鍵の開閉を行います。鍵のメーカーや品番が記載されている鍵プレートと、ラッチボルトとデッドボルトを受け止める金属製の板であるストライクに、取付ネジを使用して固定しています。サムラッチ錠のデザインは、サムラッチ錠は本締錠のシリンダーとサムラッチハンドルが離れたワンロックセパレートタイプがあります。サムラッチハンドル部分の空錠の上に間隔をあけて本締錠が設置されています。セパレートタイプには上下にシリンダーが付いているツーロックのサムラッチ錠もあります。2か所に鍵を差し込んで解錠するため、防犯性も高いのが特徴です。ほかにも、シリンダーとハンドルが一体化しているタイプもあり、交換・取り換えが比較的簡単です。

サムラッチ錠は、華やかな装飾で高級感があるため玄関ドアのアクセントとなりますが、長期間使用していると経年劣化してしまい錆びが発生するなど、機能性、見た目ともに衰えていきます。サムラッチ錠に限らず、錠前の耐用年数は約10年程度とされています。サムラッチ錠で修理交換が必要なケースは、「金具部分を押し込みすぎて元の位置に戻らない」「金具部分の動きが固い」「鍵が回りにくい」「鍵は回っても開かない」などがあげられます。鍵が回らない場合は潤滑剤を使用することで解決する場合がありますが、鍵穴専用のタイプのものでないとのちにトラブルを引き起こす可能性があります。

サムラッチ錠は、サイズや規格が決まっているわけではないため、廃版品が多かったり欠品があったりと、すぐにパーツを用意できない場合があります。サムラッチ錠を交換するとなると、代替品になるケースが高いため、防犯性も軽減してしまいます。また、メーカーによってもサイズやドアの穴の大きさが異なるため、サムラッチ錠を取替え・交換には多額の費用がかかります。取替え・交換をする場合は、サムラッチ錠の錠ケースの大きさが重要となります。加工せずに取替え・交換が可能なのは、サムラッチ錠で1番流通しているサイズである縦130mm、横25mmのタイプです。まったく同じ錠前への交換はスムーズに作業が進みますが、規格外のサムラッチ錠の場合は、穴を広げ、やすりで削るなどして調整する必要があるため、玄関ドアの見た目にも影響が出ます。

サムラッチ錠の錠前自体を交換する場合は、メーカーと品番を確認することから始まり、ドアの厚みやドアの側面にあるフロント板のサイズ、ドアノブの高さや幅の計測を行なっていきます。既存のサムラッチ錠を外すために、室内側の錠に付属しているビス2本を、ドライバーを使って台座ごと取り外します。新しい錠ケースを穴に差し込んだら、室外側にサムラッチ錠本体をあてしっかりとビスを取り付けていきます。サムラッチ錠の取り付け後は動作確認が必要です。鍵を差し込んでスムーズに玄関ドアが開閉するようであれば作業終了です。サムラッチ錠のシリンダーやサムラッチ錠全体に不具合を感じた場合は専門業者へ依頼します。鍵の専門業者であれば、サムラッチ錠への交換だけでなく時代のニーズに沿った利便性の高いデジタルロックへの交換など提案が可能です。防犯性の高い鍵にアップグレードすることで安心感も得られます。