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溶解破錠(ようかいはじょう)

溶解破錠とは、濃塩酸や濃硝酸などの強酸性の液体を混合したものを鍵穴に注入し、シリンダー内部の金属を腐食溶解させ開錠する不正侵入の手法のひとつです。溶解破錠の手順は、注入時液体が流れ出るのを防ぐためにあらかじめ鍵穴におむつなどで使われる高分子吸収剤を入れ、そこに液体を流し込みタンブラーなどを溶かして破壊にいたります。溶解破錠は「メルティング(英語で溶かすという意味)」や、「KGB破錠」と呼ばれることもあります。溶解破錠は、ドリルでシリンダーを破壊、ホールソーでシリンダーを破壊、シリンダー外し、デッドボルト切断と並んで、鍵を壊して開ける破錠開錠のひとつです。溶解破錠された鍵は使用ができなくなるため、交換することになります。ピッキングに対策がされるようになり新しい手法として現れたのがバンピングや溶解破錠です。溶解破錠はピッキングのように工具を使いシリンダー内の配置をひとつずつ探り当てる解錠方法とは違い、技術の必要なく比較的簡単に開錠できてしまいます。溶解破錠されたシリンダーは外観からわかりづらいため不正開錠に気づきにくいですが、異臭がしている場合には溶解破錠を疑います。
 
溶解破錠で狙われるのは、車やロッカーの鍵のほか、一部の住宅で使われているディスクシリンダーなどです。ディスクシリンダーに使われる金属は薄く腐食溶解しやすいため溶解破錠による不正開錠が可能です。ディスクシリンダーは2011年に製造中止になりましたが、古い住宅などでまだ使われている場合があります。ディスクシリンダーは、バンピングにはある程度耐性があるもののピッキング耐性や鍵穴破壊耐性なども低く、防犯性の優れたシリンダーに交換することが奨められています。その後継であり防犯性の向上したロータリーディスクシリンダーも、構造はディスクシリンダーと同じため溶解破錠が可能です。溶解破錠は大きな音を立てることなく開錠できてしまう手法ではありますが、必要な薬品を手に入れづらいことや、異臭が発生することから一般的な住宅の不正侵入で使われることはそれほど多くありません。

溶解破錠への対策のひとつに、補助錠の取り付けがあります。補助錠の取り付けの際はドアに穴を開けなければならず、賃貸の場合や分譲マンションの場合でもドア部分は共有であるためまずは管理会社に相談することになります。また鍵穴を開けずに取り付け可能な補助錠もあります。補助錠を取り付けることで溶解破錠されたとしても時間を稼ぐことができます。ドアチェーンの取り付けも溶解破錠対策に有効です。ドアチェーンは、通常在宅時に来客があったときなどに使用するものです。扉の内側にレールを取り付けることで、外側からチェーンをかけられる製品もあるため、設置したい場所に合えば取り付けられます。チェーンを設置する際は、開けたドアの隙間から手が入れられない程度のチェーンの長さであること、工具を使って切断されることのない頑丈なチェーンであることが重要です。溶解破錠によりドアを開けてもさらにチェーンがかかっていたら侵入者は諦める可能性があります。
 
根本的な溶解破錠対策としては、ディスクシリンダーなどの溶解破錠に弱いシリンダーを溶解破錠に強いシリンダーに交換することです。シリンダー交換をするときは、賃貸や分譲マンションなどの場合は原状回復できるよう元のシリンダーを保管しておくと後で困りません。シリンダー交換と合わせて補助錠やドアチェーンの取り付け、防犯カメラの設置など複数取り入れるほど防犯性が上がります。たとえば、カードキーはタンブラーのような物理的な構造で施錠・解錠するのではなく、カードをタッチしたり差し込んだりすることで施錠・解錠するため、カードキーに交換すれば溶解破錠で狙われることはありません。注意が必要なのは、防犯性が高いと認定された防犯建物部品の錠につけられるCPマークのついた鍵でも溶解破錠が可能なものがあります。
 
溶解破錠に強い鍵のひとつに、リバーシブルディンプルキーシリンダーの開発メーカーとして知られるdormakaba(ドルマカバ)社のカバスターネオがあります。カバスターネオは多列ピンシリンダーのディンプルキーで、特殊な耐腐食コーティングが施されており溶解破錠に強いとされています。注意点として、ディンプルキーなど複雑な内部構造を持つ高性能な鍵になる程定期的なメンテナンスが必要になり、シリンダー内に埃などが溜まると動きが重くなることがあります。メンテナンスはそれぞれの鍵により適切な方法があり、間違った方法では不具合の原因になってしまうこともあります。ディンプルキーは最も防犯性に優れている反面、価格が高くなる傾向があり、性能も低いものから高いものまで幅広いので適切なものを選ぶことが大切です。
 
溶解破錠されやすく防犯性の低いディスクシリンダーを防犯性の優れている鍵に変えることにプラスして、短時間でも施錠する、ガラス戸にも対策をすることも防犯性を高めるのに有効です。令和4年の統計を見てみると、一戸建住宅もマンションなどの共同住宅も共通して不正侵入の手口として多いのは、第1位「無施錠」第2位「ガラス破り」となっています。そして「その他」や「不明」を除くと第3位は「合鍵による不正開錠」です。溶解破錠による開錠は「その他の開錠方法」に含まれ、一戸建では第5位、マンションなどの共同住宅では第4位の不正侵入手口になります。鍵の複製による不正侵入の対策には、総合的にも防犯性の優れているディンプルキーが効果的です。また不正侵入を諦めた理由として「声をかけられた」というものが多いことから、近所で挨拶をすることも有効な防犯対策のひとつになります。

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