ディスクシリンダー錠の防犯性と鍵交換
販売された当時は急速に普及し、多くの住宅やマンションのカギとして利用されていたディスクシリンダー錠ですが、防犯性の低さがネックとなり現在は製造中止となっています。この記事では、防犯性が低いディスクシリンダー錠の構造や見分け方、防犯性が高いカギへの鍵交換などについてご紹介します。
◎ディスクシリンダー錠の構造
ディスクシリンダー錠は、主に外筒と内筒、ディスクタンブラーの3つの部分で構成されています。ディスクシリンダー錠のディスクとは、日本語で円盤という意味を指しています。ディスクシリンダー錠のタンブラーの形が円盤のような形をしているため、この名前が付けられました。ディスクシリンダー錠が施錠されている状態では、ディスクタンブラーが外筒に引っかかりカギが回らず解錠できません。ディスクシリンダー錠に正しいカギを差すと、ディスクタンブラーが動き内筒と外筒の境界線が揃うことでカギが回り解錠されます。ディスクシリンダー錠を室内側から開ける際には、サムターンを使用します。サムターンとは、ドアの内側についているつまみを回して施錠する機器のことをいいます。玄関ドアを閉めディスクシリンダー錠のサムターンのつまみを回すと、錠本体から出たデッドボルトがドア枠のストライクにかかり施錠される仕組みとなっています。ほかにも、防犯性が低いため鍵交換が必要なカギにピンタンブラー錠があります。ピンシリンダー錠とは、ピンタンブラーというピン状のタンブラーを使用しているカギですが、ディスクシリンダー錠と同じく構造がシンプルであるためピッキングの被害に遭いやすいといわれています。1990年代に販売が開始されたディスクシリンダー錠は、手頃な価格や設置しやすさ、使いやすさから一気に全国に普及しました。しかし年数が経つとともに空き巣や事務所荒らしによるピッキングの被害が増えてしまい、防犯性が低いカギとされていきました。ピッキングとは、特殊な器具をカギ穴に差し入れてカギを不正解錠する犯罪行為です。ピッキングであれば合鍵を持っていなくても他人の家に侵入でき、窃盗被害に見舞われてしまうリスクがあります。プロの空き巣であれば、防犯性が低いディスクシリンダー錠は2〜3分で解錠できるとされており、原因はディスクシリンダー錠の構造の簡易さにあるといわれています。防犯性が低いディスクシリンダー錠に代わり、防犯性が高いカギが多く開発され販売されている現在では、各カギメーカーがディスクシリンダー錠の製造を中止しています。ディスクシリンダー錠の場合には、サムターン回しという不正解錠にも注意しなければなりません。サムターン回しとは、住宅のドアに道具を使い穴を開けたりドアの隙間から道具を差し込んでサムターンを開錠する手口をいいます。合鍵を比較的簡単に作成できることも、ディスクシリンダー錠の防犯性の問題となっています。たとえば、ディスクシリンダー錠のカギを外出先などで紛失した場合、悪意のある第三者にカギを拾われ勝手に合鍵を作られてしまい、そのカギを使って自宅に侵入される可能性もあります。すでに製造されていないディスクシリンダー錠ですが、古くからある住宅や倉庫などでは鍵交換を行わずにそのまま防犯性が低いカギを使い続けているケースもあるため注意が必要です。

◎ディスクシリンダー錠の見分け方
自宅のカギがディスクシリンダー錠かどうかわからない場合は、鍵交換する必要があるかどうか確認するため玄関などのカギをチェックしてみましょう。古い住宅に今でもよく見られる、防犯性が低く鍵交換が必要なディスクシリンダー錠は、カギ穴が縦型でくの字型なっているのがその特徴となっています。ディスクシリンダー錠を解錠するカギは、先端のヘッドが丸みを帯びており左右に非対照のギザギザがついています。ディスクシリンダー錠のカギが純正キーの場合は、ヘッド部分にディスクシリンダー錠を製造したカギメーカーのロゴが刻印されています。一方合鍵の場合は、ヘッドにアルファベットと数字が刻まれています。ディスクシリンダー錠と同様、防犯性の低いピンシリンダー錠はカギの片側のみにギザギザがついているのが特徴です。この部分がピンシリンダー錠とディスクシリンダー錠の大きな違いといえるでしょう。住宅の鍵交換を10年以上行っていない場合は、ディスクシリンダー錠などの防犯性が低い古いタイプのカギである可能性があります。ディスクシリンダー錠など一般的な金属製の耐用年数は約10年とされており、それ以上になると経年劣化が目立ってくるため、鍵交換が必要となります。古いカギは、ピッキングなどの被害に遭いやすく、防犯性にも不安があります。鍵交換されず長く使い続けられているディスクシリンダー錠などのカギは、徐々に経年劣化していきます。ディスクシリンダー錠やピンシリンダー錠にカギがなかなかささらない、または抜けにくい、スムーズにカギが回らない場合は、ディスクシリンダー錠が劣化している証であるため、早急な鍵交換が必要であるといえるでしょう。ディスクシリンダー錠に使用しているカギ自体にサビや変形などが見られる場合は、鍵の寿命が近づいているためやはり早めの鍵交換を検討しましょう。ディスクシリンダー錠が完全に使えなくなってから鍵交換するのではなく、玄関の古く防犯性が低いディスクシリンダー錠を早めに鍵交換するだけでも防犯性が高まります。近年はピッキングされやすく防犯性が低いディスクシリンダー錠に代わり、防犯性が高い安全なカギが多く開発され販売されています。

◎防犯性の高いカギへの交換
防犯性がネックなディスクシリンダー錠に代わって鍵交換する場合は、より防犯性が高いカギへ交換するのが理想的です。ディスクシリンダー錠より防犯性が高く鍵交換に適したカギは、ディンプルシリンダー錠やウェーブキーシリンダー錠、ロータリーディスクシリンダー錠やマグネットタンブラー錠などがあげられます。ディンプルシリンダー錠のカギにはギザギザがなく、カギの表面に複数の丸いくぼみがあります。カギ穴にカギを差すと内部のドライバーピンとタンブラーピンの割れ目がカギと合致して、回転してカギを解錠する構造となっています。ディンプルシリンダー錠は、ディスクシリンダー錠と比べて内部の構造が複雑なためピッキングでの解錠は困難といえるでしょう。ディンプルシリンダー錠は、カギの表面のくぼみの形を変えるだけで別の鍵になるため、種類が非常に多くなっています。ディンプルシリンダー錠のなかには、防犯性を上げる目的で登録制となっており、番号を示さないと合鍵が作成できないカギもあります。カギ違い数が多いほど防犯性が高くなるため、ディスクシリンダー錠からディンプルシリンダー錠へ鍵交換する場合は、カギ違い数の多いタイプを選ぶと良いでしょう。ディンプルシリンダー錠は、合鍵を作るために非常に高度で専門的な技術が必要なため、不正に複製するのは困難であるといわれています。ウェーブキーシリンダー錠は、もともとは自動車のカギとして広く普及したカギです。カギの表面に波のような模様が刻まれているのが特徴となっています。ウェーブキーシリンダー錠には、サイドバー方式と呼ばれる仕組みが採用されており、カギの内部にはサイドバーと呼ばれる特殊な金属製のピンが組み込まれています。タンブラーはサイドバーで固定されており、正しいカギをシリンダーに差し込みサイドバーがかみ合うことで解錠されます。かみあわないとタンブラーが回転しない仕組みとなっているため、ピッキングするために器具を差し込んでも解錠できない構造となっています。防犯性が高いマグネットタンブラー錠とは、カギの磁石と錠の内筒の磁石が反発し合うことにより内部のピンが押し上げられ、一直線になることでカギが回り解錠される仕組みとなっています。磁石がひとつでも合わないとカギが回転しない構造となっているため、非常に防犯性が高くディスクシリンダー錠からの鍵交換に適しています。マグネットタンブラー錠は、タンブラーがカギ穴内に出ていないためピッキングが不可能となっています。曲がりにくく錆びにくいという特徴もあり、鍵交換に向いているカギであるといえます。防犯性が高く、ディスクシリンダー錠の後継品でもあるのがロータリーディスクタンブラー錠です。防犯性が高いロータリーディスクシリンダーは、カギ穴にカギを差すとタンブラーの欠けている部分とロッキングバーが揃い、シリンダーを回転させて解錠する仕組みとなっています。防犯性に優れピッキングに強いとされているため、ディスクシリンダー錠を防犯性の高いものに鍵交換したいと考えている場合、ロータリーディスクシリンダー錠に変えるのもひとつの方法といえます。自身や家族の安全な生活を考えるのであれば、防犯性を高めるためCPマークの付いているCP認定錠に鍵交換するのも効果的です。CPとは、防犯を表す「Crime Prevention」の頭文字を取った略称です。CP認定錠とは、警察庁や国土交通省、経済産業省など建物部品の関連団体で構成された官民合同会議で定められた住宅部品です。防犯性が高いCP認定錠は、空き巣や事務所荒らしなどが住宅などへの侵入をあきらめるとされる5分に耐えることを基準に厳しい防犯性能試験を実施し、これをクリアしたものとなっています。カギ穴のみではなくカギ全体が対象となっているため、シリンダーやサムターンも全てCP認定錠に含まれます。防犯建物部品にはカギだけではなく、ドアやサッシ、シャッターやガラス、フィルムなどがあります。防犯性が高いカギに鍵交換するとともに、ほかの防犯対策と組み合わせることでより玄関周りのセキュリティを強化することができます。

◎カギと組み合わせた効果的な防犯対策
防犯性が高いカギに鍵交換しても防犯面で不安がある、さらに防犯対策を講じたい場合は、鍵交換に加え補助錠をつけるなどしてワンドア・ツーロックを採用するとより安心です。ワンドア・ツーロックとは、一ヶ所のドアにふたつの鍵を取り付けて防犯性をアップさせる方法です。ディスクシリンダー錠からの鍵交換を行ったのみでは、一見するとどう防犯性がアップしたのかわかりません。しかし、もうひとつカギを設置すれば見た目でもわかるため効果的です。補助錠には、外付けタイプや内付けタイプ、面付けタイプなどの種類があります。外付け型の補助錠は、玄関ドアの外側に設置します。外から見ると補助錠をつけていることが人目でわかるため、空き巣のターゲットになりにくくなります。外出する際の防犯対策にはもちろん、認知症状のある高齢の方がひとりで外に出てしまうのを防ぐことができます。マンションなどの賃貸物件の場合、鍵交換には管理者の許可が必要となります。しかし、外付け型の補助錠であれば賃貸物件でも取り付け可能なものもあります。ドアの内側に取り付けるのが内付け型の補助錠です。子どもがひとりで留守番していたり、就寝時に防犯性を高めたい場合に便利なカギとなっています。ドアに穴を空けて固定するのが面付け型の補助錠です。持ち家であれば鍵交換とともに玄関に面付け補助錠を設置するのも良いでしょう。サムターン回しへの対策としては、サムターンに専用のカバーを取り付けたり、つまみを取り外せるものに変える方法があります。そのほかにも、侵入犯がサムターンを回すための工具が掛けられない形になっているサムターン回し防止用の製品も販売されています。鍵交換に加えて、防犯性に優れた機能を備えたサムターンに交換することもひとつの方法です。戸建て住宅などの場合は、玄関先に防犯カメラやセンサーライトを設置することでも防犯性を高められます。玄関先に防犯カメラがあると、空き巣などに対して抑制効果が期待できます。センサーライトは、動く人や物を感知するとライトが点灯するシステムとなっており、玄関付近にセンサーライトを取り付ければ、夜間に暗くなっても来訪者がいるとライトが点灯して知らせてくれます。ホームセンターなど身近な場所でも購入でき、価格帯も比較的手頃であるため手軽に防犯性を上げられます。
◎まとめ
住宅のカギの防犯性に不安を感じたら、ディスクシリンダー錠から防犯性が高いカギへ鍵交換を行いましょう。鍵交換は正確に取り付けを行わなければカギが正常に機能しない可能性があるため、カギの専門業者にディスクシリンダー錠の鍵交換を依頼しましょう。東京都に本社を置くカギ舎では、ディスクシリンダー錠の鍵交換をはじめ、カギに関するあらゆる依頼に対応しています。鍵交換や鍵修理などについてお困りの場合は、24時間年中無休のカギ舎にぜひご相談ください。