顔認証を用いたアクセスコントロールの導入効果
複製の効かない顔を鍵として普及されている顔認証をアクセスコントロールに用いることで、セキュリティと利便性が高まり、ニーズは今後さらに高まると考えられます。この記事では、顔認証で実現できるアクセスコントロールの仕組みや導入を検討するうえで知っておきたい認証方式の違い、登録データの運用管理に関わる知識などアクセスコントロールの機能についてご紹介します。
◎進化する顔認証とアクセスコントロールの仕組み
顔認証とは生体認証の一種で目や鼻など顔の特徴点を抽出数値化し、事前に登録されたデータとの照合により個人を特定することでアクセスコントロールを行う技術です。マンションやオフィスビルの入退室管理に留まらず、コロナ禍で必要となった防疫性やアクセスする個人の体調管理も含めその活用のシーンは大幅に増えています。鍵やICカードのように物理的な認証デバイスでは盗難や紛失、流用による個人の特定が不可になるなどセキュリティ上のリスクが大きくありました。顔認証を用いたアクセスコントロールを利用すれば手ぶらで非接触による認証が可能な利便性のメリットに加え、AIのディープラーニングにより精度の上がった認証性でセキュリティの高さが保証されます。顔認証システムは、まず撮影された画像内より人物の顔を検知します。検知された顔を検証分析し登録データと照合して個人を特定します。さらに、特定された個人のユーザー権限を事前に設定された制御内容を判断のうえ、システム通過の可否が決定される仕組みです。アクセスコントロールは、誰がいつどこにアクセスをしたかのログを管理保存することも可能です。顔認証によるアクセスコントロールログの把握は、労務管理への活用やリスク管理のための記録としておおいに役立ちます。アクセスコントロールの認証で使用される顔認証は、撮影画像から目・鼻・口などパーツ位置を計測データ化するビジュアル方式(2D認証)とパーツ位置の計測に加え赤外線カメラによる顔の凹凸の立体的情報をデータ化するIR方式(3D認証)の2種類があります。ビジュアル方式は導入コストを抑えられますが日光や照明による顔の陰影やヘアスタイル・メイクの変化などの影響を受けやすく、一方IR方式は認証の精度は高いものの専用端末利用のため導入コストがかかるなど、それぞれに特徴があります。認証用登録データの保管管理方式はデバイス型とクラウド型に分類されます。認証速度の違い、導入コストとランニングコストの問題、ネットワーク環境やデータの保管先のセキュリティ性など顔認証によるアクセスコントロールシステム導入の際に考慮が必要な点は数多くあります。アクセスコントロールにおける認証の際には、カードをかざしたり暗証番号を入力したりと手間のかかる認証方式に比べ、手ぶらで非接触、自身の顔のみで認証可能な顔認証は利用者にとっても利便性の高いものです。複製が不可能な顔をアクセスコントロールの鍵とすることで叶うセキュリティ性の高さは運用側にも利用者にもメリットでしかありません。一方で、複製・交換が効かないからこそ登録された顔認証に利用するデータの管理運用には細心の注意が必要となります。登録データの暗号化や保管先のサーバーのセキュリティ対策などです。さらに、顔データの登録にあたってはプライバシーへの配慮も必要となります。アクセスコントロールの対象となる利用者には登録データの利用範囲をしっかりと明示し理解同意を得る必要があります。アクセスコントロールために登録された顔認証用のデータは「個人識別符号」となり個人情報としての管理が必要です。アクセスコントロールに必要な顔認証用データをとりまとめたデータベースも同じく個人情報保護法に則った管理運用が必須です。事前に適切なガイドラインを作成しプライバシーにも配慮した運用管理の徹底を心がけましょう。

◎顔認証で実現できるアクセスコントロールのメリット
顔認証によるアクセスコントロールは、認証端末への接触が必須となる指紋認証や、認証端末との距離が離れると認証が難しい虹彩認証に比べ、端末との非接触により認証可能な顔認証は衛生的にも安心かつ、両手がふさがった状態でも利用できるため利便性に優れています。非接触によるアクセスコントロールは衛生的な入退室の管理という側面だけでなく、工場や物流に関わる荷物を持った状態での出入りが多い扉や、介護施設や保育施設のように同伴者へのケアのため手が離せない場合など想像以上に求められる場面は多いと考えられます。顔認証によるアクセスコントロールは認証可能な距離も長く、システムによっては複数人の同時認証も可能なためウォークスルーでの認証も可能となり、人流の多い場所や時間帯の渋滞回避が見込まれます。AIのディープラーニングにより向上した認証精度とスピードによりアンチパスバック(共連れ防止機能)や画像や動画を利用してのなりすまし防止など出入りのスムーズさとセキュリティ性の高さを両立させたアクセスコントロールを行うことが可能です。確実に個人を判断したアクセスコントロールの記録は、そのまま勤怠管理の記録として労務管理へ活用が可能となります。別途タイムカードの打刻や専用システムへのログインなどの手間を省き業務の効率化へつながるだけでなく、併せてサーモカメラによる体温の測定をすることで、従業員の健康管理も可能になります。顔認証によるアクセスコントロールで記録される入退室のログは、問題発生の際に迅速に適切な対応をとるため必要な影響範囲の把握や原因究明にも役立ちます。こうしたリスク管理の徹底は従業員への安心安全な職場環境の提供だけでなく、機密性の高いオフィスであることが対外的なアピールポイントにもなります。他にも、敷地の広い工場やオフィスであれば、アクセスコントロールに使用されたログの分析により効率の良い動線の確保などその利用価値は大きくなります。顔認証によるアクセスコントロールは、入退室にかかる時間や手間は省略したい、一方でセキュリティは強化したいといった、相反する要望を叶える最適な認証システムです。

◎多様なアクセスコントロールの機能で広がる可能性
アクセスコントロールの主軸となる機能として「認証、認可、監査」の3つがあります。識別された個人がアクセスコントロールの対象であるかを確認する認証、認証された個人のアクセス範囲を制限する認可、そして認証認可されたアクセスコントロールの履歴を記録する監査です。これらの機能により可能になるのがアクセスコントロールによる人の出入りですが、入退室に関わるアクセスコントロールとは単に出入口の扉の解錠施錠の制御を指すわけではありません。たとえば、顔認証により判定された個人のアクセスコントロールの記録は、確実な勤怠管理のデータとして労務管理や人事管理への利用が可能です。適正にアクセスコントロールされたオフィスは外部からの侵入を防ぐだけでなく、不正な内部流出のリスクにも心理的な抑制となり内部統制にも役立ちます。アクセスコントロールの対象が複数拠点であっても、クラウドシステムの利用により一括管理が可能となります。さらに、空調システムや照明管理システムと連動させることで省エネルギー化も実現でき、監視カメラや監視システムとの連携で防災扉や火災報知器への連動を促せばオフィス環境の安全性も高まります。このように各種システムとの連携によりアクセスコントロールにより実現可能なメリットは幅広く、その活用の可能性は大きな広がりをみせます。
◎顔認証を用いたアクセスコントロールの導入で得られる効果
顔認証によるアクセスコントロールはハード・ソフトの両面での技術進化にともない、認証精度の向上だけでなく大幅な低コスト化を実現することも可能になりました。導入に際し必要な規模や管理範囲、システム連携によるデータの活用方法など各々の希望に応じた内容で適切な選択を行うことで適正なコストの範囲内で十分なアクセスコントロールの効果を得ることが可能です。ICカードや暗証番号を利用する認証方式と違い、流用やなりすましの心配がない顔認証は「個人」を確実に判定することで、セキュリティ性の高さだけでなく、個人の正確なアクセス記録としてさまざまなシーンでの活用が見込まれます。労働環境や労働者の意識に則した業務改善は、企業の急務課題となっています。働き方改革関連法の施行に伴い義務化された勤怠状況の正確な把握は、従来のタイムカードや専用システムでの管理だけでは網羅できない現状があります。顔認証による入退室管理を行うアクセスコントロールでは、確実に個人を判定しての入退室時刻の正確な把握が可能です。出勤退勤時刻だけでなく、残業時間の可視化や勤務日数および休日取得状況、有給消化日数など、打刻漏れや不正入力などで正確な把握が難しかった現場の勤務実態を明らかにします。こうした勤務実態の正確なデータをシステムにより自動で収集管理できることで労務管理の大幅な業務効率化につながることは明白です。把握した実態を管理分析し業務改善へつなげれば、適正な人件費の削減や生産性の向上など、企業側従業員側と双方のメリットになります。複数のデバイスもアクセスコントロールユニットであるドアコントローラーとの組み合わせにより統括して管理することが可能となります。複数拠点を一括管理できることで各出入口に警備員や受付を配置する必要もなくなるため大幅な人員削減だけでなく、人的ミスによる不正なアクセスを防ぐセキュリティ性の向上が併せて叶います。顔認証によるアクセスコントロールは、不審者の侵入や機密情報の内部からの不正流出を防ぐといった単なる入退室管理のセキュリティ性のみでなく、カメラ付きのデバイスであればシステムを利用するユーザーをリアルタイムにモニタリングすることが可能となります。付帯されたカメラの性能によりますがアクセスコントロールの対象でないユーザーの顔が認識されれば画面表示をストップしアラームを鳴らすなど作業者背後からの「のぞき見」でさえ防止することも可能なのは顔認証ならではの効果です。アクセスコントロールは入退室に関わらずシステムへのアクセスログを管理することで、何かしらの問題発生時には影響範囲の特定や原因究明のための大きな手掛かりとなります。過去ログをトレースすることで迅速で適正な対処が可能になりリスクマネジメントの点からも大きなメリットとなり得ます。アクセスコントロールの導入に際しては、管理運用が必要な範囲や利用したい機能を考慮してハードとソフトそれぞれの組み合わせを決める必要があります。単に1カ所の扉の出入りのみ管理したい場合と、複数拠点の一括管理と各システムへの連携を希望する場合では当然ながら必要なデバイスの数やシステムの構築内容も大きく異なります。アクセスコントロール時のセキュリティ性の高さを求めるのであれば、顔認証に関わる機器の性能だけではなく認証方法についても考慮すべきです。撮影画像から目・鼻・口などの位置関係と輪郭などの特徴量を計測データ化し判定する「ビジュアル方式(2D認証)」は対応可能な端末が多く導入コストを抑えられる反面、顔認証時に照明や日光など光源による影響を受けやすいため設置ロケーションに精度が左右されることもあります。一方、ビジュアル方式に顔の凹凸の立体情報を加えた顔認証の方式である「IR方式(3D認証)」はメイクやヘアスタイルの変化などの影響を受けにくく認証精度は非常に高いものがありますが、専用端末が必要になるため導入コストがかかるといった問題があります。アクセスコントロールのために必要な登録データの管理方法も、利用できる環境や管理の規模により方法が分かれます。「デバイス型」であれば顔の認証判定が設置したデバイス内で完結するため認証速度が早く、ランニングコストも低く抑えることができますが、アクセスコントロールされたログの活用や複数拠点の一括管理が難しい場合があります。「オンプレミス型」であればニーズに沿ったシステム構築は可能になりますが導入から運用や、その後の保守まで自社で行う必要があるためコストが大きくかかります。「クラウド型」のシステムはネット環境が整っていれば専用サーバーの設置が不要となり設置後の運用保守サービスも含めアクセスコントロールの仕組み一式をサービス提供事業者へ任せることができますが、契約するシステムによっては月額利用料が発生するなどランニングコストが必要になります。このように、顔認証を用いたアクセスコントロールを導入するには導入費用やランニングコスト、環境や管理方法に適したシステムを複数の選択肢の組み合わせにより決定する必要があります。さらに、導入後に得られる効果についても考慮し、自社に必要なアクセスコントロールのシステムを構築するには専門知識を有する相談先が必須となります。

◎アクセスコントロールに用いるKJTECH&KJTECH japan製品紹介
○FE-500

KJTECH&KJTECH japanのFE-500は5インチのタッチスクリーンを有する入退室管理システムの認証端末です。顔認証だけでなくカード認証、QRコード認証に対応しています。顔認証ではマスク検出機能に加え、認証速度は世界最高水準の1秒以下(50K1:Nモード)を誇ります。最大5人の複数顔認証と認証可能範囲が最長3mの性能で人流の多い朝の出勤時間帯などでも渋滞を発生させることなく認証対応できます。
○FE-600

KJTECH&KJTECH japanのFE-600は顔認証、カード認証に加え指紋認証にも対応した入退室管理システムの認証端末です。顔認証のためのユーザー登録数は最大50,000人、指紋認証の登録は5,000人が可能です。認証速度は1秒以下(50K-Face1:Nモード)、マルチフェイス認証で最大5人の同時認証を行えます。また、写真や動画による不正アクセスに対応したライブ検出機能も搭載しており高度な認証精度を有します。
○2ドアコントローラー/K2X
アクセス制御ユニット2ドアコントローラー/K2Xの製品サイズは、150mm×200mm×25mmです。入退室管理システムに組み込むことで2つの扉のアクセスコントロールを行います。動作環境は消費電力MAX 1A/12V、動作温度0~75℃です。ネットワークは、100MB On board Ethernet TCP/IP Aに対応しています。工業規格KC、FCC、CE認証となっています。
◎まとめ
認証精度の向上が著しい顔認証を用いたアクセスコントロールは、セキュリティ性の高さや利便性だけでなく、その運用によってもたらされるメリットも数多くあります。一方で、個人情報保護の観点からも顔認証に使用するデータの運用管理に係る懸念事項は残ります。コストや設置条件だけでなく、必要な機能・効果を適切に判断したうえで、安心安全の仕組みとして顔認証によるアクセスコントロールの導入を検討するには専門家への相談が1番の近道です。アクセスコントロールの導入は、カギ舎へお気軽にお問合せください。