玄関ドアにおけるドアクローザーのトラブル
「ドアが閉じるスピードが遅くなった、または早くなった」「ドアの上部から油が漏れている」「ドアの開閉時に異音がする」など、玄関ドアに関するトラブルはありませんか。これらのトラブルは、ドアクローザーによる問題かもしれません。この記事では、玄関ドアやドアクローザーについての基本的な知識や、ドアクローザーによる玄関ドアのトラブルとその原因について詳しくご紹介します。
◎玄関ドアのタイプと素材の違い
玄関ドアは、開き戸タイプと引き戸タイプがあります。開き戸とは、押したり引いたりして開閉するドアのことです。戸建て住宅、集合住宅ともに日本の玄関ドアの約9割は開き戸を採用しています。一方引き戸とは、横にスライドさせて動かすタイプのドアのことで、昔の住宅の玄関ドアは引き戸が主流でした。引き戸は、開き戸に比べて防犯性や気密性、断熱性などの性能が劣ると言われていましたが、性能は向上し現在は大きな性能差はなくなりました。引き戸は、玄関ポーチを広く使えること、開口部を広く取りやすいこと、けがのリスクが少ないことなどのメリットがあり、再び注目されるようになってきています。さらに詳しく見ていくと、開き戸タイプには、片開きドア、袖付きドア(片袖・両袖)、親子ドア、両開きドアがあります。片開きドアは、1枚の扉を開閉するもので、もっとも一般的で種類も豊富です。小さな間口にも設置することができます。袖付きドア(片袖・両袖)は、片開きドアの隣に、開閉することができない固定された袖がついています。袖には採光用のガラスが設置されているものが多いです。左右どちらかに袖があるものを片袖、左右両方に袖があるものを両袖と言います。親子ドアは、片開きドアと幅の狭い2枚の扉がついています。普段は片開きドアを使用し、開口部を広く取りたい場合に必要に応じて子扉を開くことができるので、大きな荷物の搬送時などに便利です。両開きドアは、幅の同じ2枚の扉を左右対称に組み合わせたドアです。大きな間口を取ることができるので利便性はもちろん、開放感や重厚感も演出することができます。引き戸タイプには、引き違い扉、片引き扉、両引き扉があります。引き違い扉は、もっとも一般的な引き戸のタイプで、2枚以上 の扉を左右にスライドさせて開閉します。一般的には2枚扉が多いですが、3~4枚使用した引き違い扉もあります。すべてのドアを自由にスライドさせることができるため、左右どちらの扉からも出入りすることができます。片引き扉は、扉が1枚しかないドアです。左右どちらか一方しか出入りすることができません。扉の枚数が少ないため、引き戸のなかでは費用を抑えられます。両引き扉は、2枚の戸を左右にスライドさせて、両側の壁に引き込むことができる引き戸です。左右の扉は、一方向にだけ開きます。2枚建ての引き戸と同じスペースながら、開口部を広く作ることができます。玄関ドアの素材は、主に木製ドアと金属製ドアがあります。素材の違いは見た目やデザインだけでなく、機能面でも異なる特徴を持ちます。断熱性が高いのは木製ドア、耐久性が高いのは金属製ドアと言われていますが、断熱性については断熱材の使用に伴い性能が向上し、最近では木製と金属製に大きな差はなくなりました。耐用年数は木製ドアが約15~20年、金属製ドアが約20~30年と言われています。玄関ドアの性能向上によって高性能なドアを長く使用できるようになりましたが、実際はドアの寿命を迎える前に各部品が故障すると、トラブルを生じることが多くなります。

◎ドアクローザーの働きと種類
玄関ドアの部品の1つにドアクローザーがあります。ドアクローザーによって、ドアを自動的にゆっくりと閉めることができます。ドアクローザーは、ドアの上部に取り付けられている装置です。ドアクローザーの内部には油が入っており、油圧によってドアをゆっくりと自動的に閉じる仕組みになっています。ドアクローザーのメリットとしては、静音性の向上、安全性の向上、利便性の向上、ドアの故障防止などがあげられます。現在の開き戸の玄関ドアのほとんどの製品には、ドアクローザーが完備されています。引き戸は一部オプション機能となりますが、ほとんどの製品にドアクローザーとしての機能をつけることができます。また、ドアクローザーは後付することも可能です。ドアクローザーは、正確には開き戸タイプのドアに使う製品を指します。引き戸タイプのドアは、オートクローズと呼ばれています。両者の機能は同じであるため、引き戸のドアクローザーとも言われます。開き戸タイプと引き戸タイプのドアクローザーは形状がまったく異なるため、それぞれをドアクローザー、オートクローズと呼びわけています。開き戸のドアクローザーには、スタンダード型、パラレル型、コンシールド型の3種類があります。スタンダード型は、アームがドアの面に垂直についており、ドアを引き開く側に取り付けられています。パラレル型は、アームがドアの面に平行に設置されており、ドアを押し開く側に取り付けられています。一般的な玄関ドアにつけられるのは、パラレル型になります。また、ドアクローザーの部品がドアクローザー本体とレールにわかれている、コンシールド型と呼ばれるものがあります。コンシールド型は、外側からドアクローザーが目立たずデザイン性に優れています。ドアクローザーにはドアをゆっくり閉める以外にも製品によって、さまざまな機能を搭載しているものもあります。速度調整機能、ストップ機能、ラッチングアクション機能、バックチェック機能、ディレードアクション機能などがあげられます。速度調整機能は、ドアの閉じる速度を調整する機能です。全開からドアが閉じるまで段階的に速度を調整できるようにそれぞれに速度調整弁がついています。ストップ機能は、ドアを開いたままの状態で保持する機能です。便利な機能ですが、共同住宅では消防法の観点でストップ機能の利用が制限されています。ラッチングアクション機能は、ドアが閉まる直前で速度が増して強く素早く閉める機能で、ドアが半開きになることを防止します。バックチェック機能は、特定の角度から急激にドアが開くことを制御する機能です。強風などによってドアが急に開いてしまうのを防ぎます。ディレードアクション機能は、閉じはじめのスピードを制御する機能です。全開から75~65°までのドアの閉まるスピードを遅くすることができます。ドアクローザーは、ドアの大きさや重量に合わせて、適切なものを選択する必要があります。一般的に使われるタイプは、一般住宅の室内木製ドアなどに使われる軽量ドア用、一般的な玄関ドアなどに多い中量ドア用、オフィスビルや幅広のマンションドアなどは主にスチール製の重量ドア用になります。 

◎ドアクローザーが原因の玄関ドアトラブル
さまざまな玄関ドアに関するトラブルのなかでも、ドアクローザーの不具合によるトラブルについて取り上げてご紹介します。ドアクローザー自体が引き起こす、もっとも重大なトラブルは、ドアクローザー内部にある油に関するトラブルです。油のトラブルは主にドアクローザーから油が漏れることによって生じます。油漏れは明らかに見てわかる場合も多いですが、漏れる量がごくわずかな場合もあります。少量でも油が漏れるとトラブルを引き起こす原因になるため、直ちに対処しましょう。ドアクローザーが油漏れを引き起こす主な原因は2つあります。1つ目は、ドアクローザーの速度調整弁が外れてしまうことです。ドアクローザーの速度調整弁が外れる原因としては、ドアまたはドアクローザーに何らかの衝撃が加わったことや速度調整弁を回しすぎたことなどが考えられます。2つ目は経年劣化で、速度調整弁に問題がない場合は、経年劣化の可能性を考えます。ドアクローザーの耐用回数は、そのグレードにより20万回または50万回と基準が定められています。年数に換算するとおよそ10年~20年といわれています。ドアクローザーを1度も交換することなく10年以上使用している、かつトラブルに対しさまざまな対処を行っても改善がみられない場合は、経年劣化による油に関するトラブルを生じている可能性があります。ドアクローザーの油に関するトラブルが起こると、ドアクローザー本体を交換すること以外に対処法はありません。また、ドアクローザーのトラブルが発生した際に、正しい知識がないまま不用意に触ってしまうと2次的なトラブルを生じ、最悪ドアクローザーを交換する事態になってしまうので注意が必要です。ドアクローザーの不具合によって起こりうるトラブルの具体的な症状としては、ドアが閉まるスピードが遅い、ドアが閉まるスピードが速い、ドアが重たくて開けにくい、ドアが自動で閉まらない、ドアがスムーズに閉まらない、ドアの開閉時に異音がするなどがあります。ドアが閉まるスピードが遅くなる、ドアが重たくて開けにくくなるトラブルは、2つとも同じ原因によって生じるトラブルである可能性が高いです。まず、ドアの大きさや重量に対し、適切なドアクローザーが使われていないことです。ドアクローザーはドアの大きさや重量によって種類がわかれています。該当ドアよりも重たいドアに適したドアクローザーを使用してしまうと、油圧がかかりすぎるためドアが重たくなってしまいます。速度調整弁を締めすぎていることもよくある原因になります。速度調整弁が何らかの原因によって適切な位置からずれてしまうと、ドアの閉じるスピードが変わってしまいます。ほかには、ドアクローザー内部の油の粘度が固くなっていることがあげられます。少し古いタイプのドアクローザーの内部の油は、気温の変化に伴って粘度が変化してしまいます。油は気温が高いと緩くなり、寒くなると硬くなります。ドアクローザー内部の油が硬くなるとドアが閉まるスピードが遅くなってしまいます。しかし、現在はドアクローザー内部の油は改良されており、気温による粘性の変化を受けにくくなりました。ドアが閉まるスピードが速くなるトラブルの原因としては、ドアクローザーの油切れまたは速度調整弁が緩くなったことが影響している可能性があります。ドアクローザーの油が切れると、ドアクローザー内部の油圧が軽くなり、ドアが速く閉まってしまいます。ドアクローザーの調整弁が緩くなっている場合も同様に、ドアが速く閉まってしまいます。ドアが速く閉まると指を挟むなどの事故が起こる場合がありますので、直ちに対処し安全を確保しましょう。次は、ドアが自動で閉まらなくなるトラブルで考えられる原因は4つあります。まず、速度調整弁の調整不良の可能性です。速度調整弁の多くは、ドアの開閉角度によって段階的に速度を調整できるようになっています。ドアが閉まりきらない場合は、ドアが閉まる直前の3速またはラッチングの速度調整弁が適切な位置にない可能性があります。アームの劣化も原因としてあげられます。ドアクローザーの可動部であるアームに、サビや汚れがたまると動きが悪くなります。閉じている途中でそれらが動かなくなってしまうと、ドアもそこで止まってしまいます。ドアクローザー内部の油が硬くなると、ドアが閉まる速度が遅くなり、場合によっては動きが止まってしまうことがあります。ドアの大きさや重さに対し、適切なドアクローザーが取り付けられていない可能性も考えられます。該当ドアよりも軽量タイプ用のドアクローザーが取り付けられた場合は、ドアを閉める力が不十分となるため、ドアが閉まりきらず途中で止まってしまうことがあります。ドアがスムーズに閉まらなくなるトラブルの原因は、速度調整弁の調整不良があげられます。ドアクローザーの速度調整弁は、ドアの角度によって段階的にスピードを変えることができるよう複数個ついているものが主流です。それぞれの速度調整弁が適切な位置にないと、ドアが閉まる一連の動きがスムーズでなくなってしまいます。通常、ドアの閉まりはじめは速い速度で動き、閉まる直前になると速度を落としてゆっくり閉じるように調整します。ドアの一連の動きがスムーズになるように速度調整弁を1つずつ適切な位置に調整しなければなりません。ドアの開閉時に異音がするトラブルは、考えられる原因は3つあります。まずドアクローザー各種のネジのゆるみです。ドアクローザー本体の取り付け部分やブラケットの取付部、レバーとリンクの連結部、ストップジョイント部分のロックナットなど、さまざまな部分にネジが使われています。ネジが緩むことで接続が弱くなり、異音を生じる原因となります。玄関ドアのドアクローザーは、外気にさらされることで汚れやサビが付きやすく劣化しやすい部品の1つです。アームやリンクの汚れやサビの付着により、異音を生じる可能性があります。ほかにも、ドアクローザー内の油圧が減少すると、きしむような異音を発生する場合があります。このようにドアクローザーのトラブルにはさまざまな原因があります。トラブルの原因となる各部位の調整や清掃などで解消しない場合は、ドアクローザーの寿命である可能性も考えられます。ドアクローザーの耐用年数を超えて使用している場合は、ドアクローザーの交換を視野に入れましょう。ドアクローザーのトラブルを放置すると、さらなる2次的なトラブルを引き起こす可能性もあるので 適切に対処しましょう。ドアクローザーは、人為的な作業ミスによってさらなるトラブルを重ね、交換まで発展するトラブルとなる場合もあります。ドアクローザーによるトラブルが生じた場合は専門業者に相談することをおすすめします。

◎ドアクローザーの調整と交換方法
ドアクローザーは速度調整弁のねじを回すことでドアの閉まる速度を調整します。速度調整弁は調整する区間ごとにわかれており、調整弁1、調整弁2、調整弁3(L)とだいたい2~3個ついています。基本的には、調整弁1から順番に調整します。調整のコツは、少しずつ調整弁を回すこと、調整弁を回すごとにドアのスピードを確認することです。また全開からドアが閉じるまでを5~8秒に設定するのが一般的です。さらにドアが閉まる直前の区間の速度を落とし、ゆっくり閉じるよう段階的に調整します。調整弁を緩めすぎてネジが外れてしまうと、ドアクローザー本体から油が漏れるトラブルが発生してしまいます。1度油が漏れるとドアクローザーごと交換しなければならないので注意しましょう。また速度調整弁を調整しても適切な速度にならない場合は、ドアクローザーが故障している可能性が高いと考えられるので、ドアクローザーの交換を検討しましょう。ドアクローザーの油漏れや寿命、各種調整などでトラブルが改善しない場合は、ドアクローザーの交換が必要です。ドアクローザーの交換作業は、各部品を取り付けるだけでなく、その後細かい調整が必要になります。作業は慣れていないと難しく、またドアに指を挟むなどの2次的なトラブルが発生するおそれがあるため、専門業者に依頼をしましょう。まずは、既存のドアクローザーの部品を全て取り外します。なかには、サビ等によって既存のドアクローザーが取り外せないトラブルが起こることもあります。その場合、特殊なドライバーを用いて対処します。すべての部品が外れたら新しいドアクローザーを取り付けます。既存のネジ穴が活用できない場合は、新しく穴を開ける作業も必要になります。まず、本体取付板とブラケットから取り付けます。そしてドアクローザーとアームを取り付けたら、取付板にはめ込みます。そしてアームとリンクを連結させます。リンクはドアの面に平行になるように角度を調整します。最後に速度調整弁で、ドアがスムーズに閉まるよう速度を調整して作業完了です。
◎まとめ
玄関ドアのトラブルは数多く報告されていますが、そのトラブルの原因の1つにドアクローザーがあります。ドアクローザーは、ドアの利便性を向上させるだけでなく、けがなどのトラブルを防止する側面もあります。ドアクローザーのトラブルを放置しておくのは危険ですので、直ちに対処しましょう。カギ舎では、ドアクローザーのトラブルに対する修理・交換を行っています。ご相談は24時間年中無休で承っており、お見積りは無料です。ドアクローザーのトラブルにお困りの方は、お気軽にカギ舎までお問い合わせください。