高輝度LEDで認証精度を高めた顔認証リーダーFE-800SEの入退室管理
オフィスや店舗の扉は、長く物理鍵によって管理されてきました。物理鍵にできるのは施錠と解錠までで、誰がいつ出入りしたのかを記録として残すことはできません。警察庁の統計では住宅への侵入手口の上位に合かぎがあげられており、鍵の複製や返却漏れは今も現実的なリスクです。近年は入退室管理の記録が、内部不正の抑止や労働時間の客観的な把握にも使われるようになりました。この記事では、物理鍵では入退室管理ができない理由や顔認証の精度を左右する条件、電気錠と組み合わせて入退室管理システムを構築できる顔認証リーダーFE-800SEをご紹介します。
◎物理鍵だけでは入退室管理ができない理由
シリンダー錠と物理鍵による扉の管理でできるのは、鍵を持つ人を通し、持たない人を通さないという施錠管理です。入退室管理とは、誰がいつどの扉を通ったのかを把握し、記録として残すことを指します。施錠管理と入退室管理は目的が異なるため、物理鍵の運用をいくら厳格にしても入退室管理にはなりません。入退室管理が成り立つには、本人の識別と通行履歴の記録という2つの要件が欠かせず、物理鍵はそのどちらも満たしていません。
入退室管理に必要な本人の識別が物理鍵でできないのは、扉の側が判断できるのが、正しい鍵が差し込まれたかどうかだけだからです。鍵は貸し借りも複製もできるため、別の人が使っていても扉の側からは区別がつきません。警察庁が公表している令和7年の侵入窃盗の認知件数は47,233件で、前年より9.8%増えています。発生場所別では一般事務所が8.3%を占めており、住宅以外の建物も狙われていることがわかります。住宅を対象とした侵入手口では合かぎが上位3位までに入っており、警察庁も複製する鍵の本数を必要最低限に抑えるよう呼びかけています。鍵を紛失した場合はシリンダーごと交換する必要があり、交換が終わるまでは紛失した鍵が使える状態のまま残ります。退職者や契約終了者からの返却漏れがあれば、権限のない人物が入室できる状態も続いてしまいます。貸し借りや複製、紛失、返却漏れは、いずれも物理鍵が本人を識別できないことから生じる問題です。
入退室管理に必要な通行履歴の記録も、物理鍵では残せません。施錠と解錠はできても、誰がいつ入室したのかを後から確認する手段がないためです。入口に台帳を置いて記入してもらう運用もありますが、記入するかどうかは本人に委ねられ、記録の抜けは後からさかのぼって埋めることができません。台帳の記録では、入退室管理に求められる正確な履歴にはならないのです。
通行履歴が求められる背景には、内部不正への警戒があります。IPAの情報セキュリティ10大脅威2026では、内部不正による情報漏洩が組織編の7位に入り、2016年の初選出から11年連続で選ばれています。個人情報保護委員会のガイドラインは、個人情報保護法が求める物理的安全管理措置のうち、個人データを取り扱う区域の管理の方法として入退室管理を例示しています。物理鍵の施錠管理だけでは、この入退室管理を実施していることを示す記録が残りません。本人を識別し、通行履歴を自動的に蓄積できる入退室管理を実現する土台となるのが、電気錠と顔認証などの認証装置を組み合わせた構成です。
(参考:IPAの情報セキュリティ10大脅威2026 https://www.ipa.go.jp/security/10threats/10threats2026.html)
◎3段階の処理で本人を特定する顔認証の仕組み
顔認証は、カメラで捉えた顔から特徴を抽出し、あらかじめ登録された情報と照合して本人を確認する技術です。顔認証は入退室管理システムの認証方式としても広く使われており、処理は顔検出、特徴点の抽出、照合という3つの段階に分かれます。顔検出は、カメラに映った画像から顔の領域を切り出す処理です。特徴点の抽出は、目や鼻、口の位置と形状を数値として捉える処理です。照合は、抽出した特徴を登録済みの特徴と比べ、同一人物かどうかを判定する処理です。
個人情報保護法では、顔の部位の位置や形状から抽出した特徴情報のうち、本人を認証できるようにしたものを個人識別符号としています。そのため顔認証に使う顔特徴データは個人情報にあたり、入退室管理で扱う場合も安全管理措置の対象になります。個人情報保護委員会は、顔認証と顔識別を明確に区別しています。顔認証は当人の要請に応じて本人であることを確認するもので、その例として入退館システムがあげられています。顔識別は不特定多数の中から登録された特定の人物を見つけ出すもので、顔識別機能付きカメラシステムがこれにあたります。入退室管理で使う顔認証は、利用者から事前に同意を得やすく、不特定多数を対象とする顔識別とは使われる場面が異なります。
顔認証の照合方式には1対1認証と1対N認証があり、1対1認証はカードや暗証番号で個人を特定してから照合する方式です。1対N認証は全データから一致するものを探す方式で、何も提示せずに通行できるため入退室管理の手間を減らせます。顔の捉え方にも2D方式と3D方式があり、平面の画像で計測する2D方式は、写真や画面表示によるなりすましに弱い点が課題です。3D方式は顔の奥行きを捉える方式で、赤外線を用いるものは可視光に依存しないため暗い場所や逆光にも強いという特長があります。
顔認証のなりすましを防ぐ機能はライブネス検出と呼ばれ、アクティブ型とパッシブ型の2種類に分かれます。アクティブ型は、まばたきなどの動作を求めて生体かどうかを判定します。パッシブ型は利用者に操作を求めず、顔の質感や奥行きの情報から自動的に判定する方式です。入退室管理では通行の速さが求められるため、パッシブ型の顔認証のほうが日常業務を妨げにくいといえます。入退室管理に使う顔認証のなりすまし対策は、試験方法がISO/IEC 30107-3として国際規格化されています。顔認証で本人を識別できるようになると、入退室管理には通行の記録という新たな価値が生まれます。
◎内部不正の抑止と勤怠の裏付けになる入退室管理の記録
顔認証を用いた入退室管理では、通行のたびに日時と個人が記録として自動的に残ります。利用者が意識して何かをしなくても入退室管理の記録が蓄積されるため、記入漏れや後からの書き足しは起こりません。
内部不正の抑止は、入退室管理の記録が残ることで得られる効果のひとつです。IPAの組織における内部不正防止ガイドラインは、各入退出管理ポイントで入退出の記録を取ることが、内部不正の防止と発生後の追跡に必要だとしています。同ガイドラインは、顔写真等の個人を特定するための記録を取ることで、より高い抑止効果が期待できるとも述べており、顔認証による入退室管理はこの考え方に沿った仕組みです。入退室管理の記録が残るとわかっている環境では、情報の持ち出しそのものが起こりにくくなります。抑止の前提となるのは記録が1人ひとりにひもづいて残ることで、IPAのガイドラインも鍵やICカードの貸し借りを原則として禁止し、入退室の履歴を個人単位で記録することをあげています。入退室管理の記録を定期的に見直して照合すれば抑止の効果が保たれ、情報漏洩が疑われた場合も誰がいつ入室したかをたどれます。
入退室管理の記録は、労働時間を客観的に把握するための資料としても使えます。2019年4月に施行された労働安全衛生法第66条の8の3は、事業者に労働者の労働時間の状況を把握することを義務づけています。把握の方法は労働安全衛生規則第52条の7の3に定められ、タイムカードやパソコンの使用時間の記録といった客観的な方法とされています。この義務の対象には裁量労働制の適用者や管理監督者も含まれ、記録は作成したうえで3年間保存しなければなりません。厚生労働省のガイドラインは、始業と終業の時刻を確認する原則的な方法のひとつとして、タイムカードやICカードなどの客観的な記録をあげています。同ガイドラインは、自己申告の労働時間と入退場記録からわかる事業場内にいた時間に著しい乖離があれば、実態調査を行って補正するよう求めています。入退室管理の記録は、勤怠の申告が実態とあっているかを裏づける資料になり、入退室管理の記録を勤怠管理と連携させれば、打刻と入室の二重の手間もなくなります。
このように、記録が残る入退室管理は、内部不正への備えと勤怠の適正な管理を同時に支える仕組みといえます。入退室管理の効果を十分に引き出すには、設置場所の条件に合った顔認証リーダーを選ぶことが大切です。
◎設置環境と非常時の解錠から見る入退室管理の選定ポイント
顔認証を用いた入退室管理では、導入前に確認しておきたい条件があります。設置場所の明るさは、入退室管理に使う顔認証の精度を大きく左右する条件です。エントランスのように背後がガラス張りの場所では、逆光によって顔が暗く写ります。夜間や早朝にも入退室管理が必要な拠点では、照明が落ちた状態での認証が求められます。この課題への対策となるのが、赤外線を用いた3D方式と、補助光としての高輝度LEDライトです。高輝度LEDは、逆光や暗所で不足する光量を補う役割を果たします。
入退室管理ではマスクや眼鏡を着けたまま通行する場面も多く、その着用も顔認証の成否を分ける要因になります。アメリカ国立標準技術研究所は、マスクを合成した620万枚の画像で顔認証の精度を検証しています。その報告では、マスクなしの良好な条件で本人拒否率が0.3%程度だったアルゴリズムが、被覆面積の大きいマスクで5%程度まで悪化しました。鼻の隠れ方による差も大きく、被覆の度合いが低い場合で約6倍、中程度で約20倍、高い場合は約30倍まで本人拒否率が上がります。一方で、2020年3月中旬以降に提出されたアルゴリズムは、それ以前と比べて本人拒否率の中央値が約25%下がっています。1対Nの検索に失敗する割合も、2010年の5%から2018年には0.2%まで下がりました。精度は機種と世代によって大きく変わるため、入退室管理に使う顔認証リーダーは導入前に使用環境で確かめることが大切です。
入退室管理を導入する扉では非常時の挙動も確認が必要で、その挙動は組み合わせる電気錠の型式で決まります。電気錠の代表的な型式には通電時解錠型と通電時施錠型があり、停電したときの挙動が逆になります。通電時解錠型は電気が止まると施錠されるため、機密性を優先する扉に向いています。通電時施錠型は電気が止まると解錠されるため、避難経路にあたる扉に適した仕様です。建築基準法施行令第125条の2は、一定の建築物について、屋外避難階段に通じる出口やふだん施錠している非常用の出口などの施錠装置の構造を定めています。屋内から鍵を用いずに解錠できることと、その解錠方法を表示することが求められます。消防本部の審査基準の例では、非常時に自動で解錠できる機能として、停電時の手動開放、自動火災報知設備と連動した解錠、防災センター等からの遠隔操作があげられています。どの扉にどちらの電気錠を選ぶかは、入退室管理で守る対象と避難動線の両面から判断します。
既存設備を流用できるかどうかは、入退室管理の工事の範囲と費用を左右します。すでに電気錠や自動ドアが入っている建物であれば、入退室管理のために扉まわりを一から作り直す必要はありません。認証リーダーから制御盤へ解錠の信号を渡す構成なら、既存の電気錠システムに後付けする形で入退室管理を構築できます。
◎逆光や暗所でも精度を保つ顔認証リーダーFE-800SE
KJ TECH japanのFE-800SEは、2026年9月7日に発売された入退室管理用の顔認証リーダーです。FE-800シリーズの新モデルで、FE-500と同等の価格帯を保ちながら、中小オフィスや店舗、コワーキングスペースの入退室管理への導入を想定しています。高輝度LEDライトを搭載しており、逆光になるエントランスや夜間の通用口でも顔認証の精度を保ちます。顔認証のなりすまし防止機能も備え、写真や画面表示による不正な通行を防ぎます。識別時間は0.3秒未満、顔検出距離は最大2メートルで、スムーズな認証が可能です。認証方式は、顔認証、暗証番号認証、QRコード認証の3種類で、ANDとORを組み合わせて設定できます。顔と暗証番号の両方を求めれば多要素認証となり、セキュリティ性がさらに高まります。QRコード認証は、来訪者や清掃業者など継続して登録しない相手の入退室管理にも活用できます。顔の登録件数は50,000件、イベントログは200,000件まで保存でき、勤怠管理との連携にも対応しています。アンチパスバックにも対応し、入室の記録がない人物の退室を制限できます。TCP/IPとWiegand出力を備え、主要メーカーの電気錠や自動ドアと連動できるよう設計されているため、既存の設備に入退室管理システムを後付けで導入できます。ディスプレイは5インチのIPSタッチスクリーンで、認証結果が見やすい点も特長です。防塵防水はIP65、動作温度は-20℃から+60℃に対応しています。本体サイズは、110(W)×25(D)×188(H)mmで、扉の脇の限られたスペースにも収まります。
◎顔認証リーダーFE-800SEと電気錠を用いた入退室管理の活用シーン
入退室管理は、扉ごとに求められる強度や通行量が異なるため、場所に合わせた組み合わせを選ぶことが重要です。電気錠と顔認証リーダーFE-800SEを組み合わせれば、通行の記録が自動的に残り、勤怠や内部不正対策の資料としても活用できます。
⚪︎中小オフィスの執務エリアにおける電気錠と顔認証リーダーFE-800SEの活用
個人情報を扱う執務エリアの入退室管理として、入口に電気錠とFE-800SEを設置する使い方です。窓際で日中は逆光になる入口でも、高輝度LEDライトによって顔認証が安定します。入退室管理の記録を勤怠管理と連携させれば、出退勤の打刻を別に行う手間もなくなります。異動や退職の際は登録データを削除するだけで権限を解除でき、鍵の回収も必要ありません。
⚪︎コワーキングスペースの共用扉における顔認証リーダーFE-800SEの活用
会員の入退室管理が必要な共用扉に、既存の自動ドアと連動させてFE-800SEを設置する使い方です。会員は顔認証で通行し、一日利用の来訪者にはQRコードを発行して入退室管理を行います。受付に人を置かない時間帯でも、顔認証で登録済みの会員に入室を限る運用が可能です。出入口の両側に認証装置を設けてアンチパスバックを有効にすれば、入室の記録がないままの退室を制限できます。入退室管理の記録は本体に200,000件まで残るため、後から利用状況をさかのぼって確認できます。
◎まとめ
物理鍵の施錠管理では、入退室管理に必要な本人の識別も通行履歴の記録もできません。顔認証を用いた入退室管理なら、通行のたびに日時と個人が自動的に記録され、内部不正の抑止や労働時間の客観的な把握にも活用できます。顔認証リーダーFE-800SEは、高輝度LEDライトで逆光や暗所でも認証精度を保ち、既存の電気錠や自動ドアにも後付けできます。カギ舎では、顔認証リーダーFE-800SEをはじめ、入退室管理に必要な電気錠や認証装置を取り扱っております。オフィスや店舗の入退室管理の見直しをご検討の方は、お気軽にお問い合わせください。












