落雷で電気錠が故障したときの対処法
ゲリラ豪雨のような突然の大雨の後に、急に電気錠が使えなくなったというトラブルを聞いたことがある人もいるかもしれません。その電気錠の故障は、実は大雨のときに発生した落雷が原因の可能性があります。「建物に雷は落ちていない」と思われるかもしれませんが、直接的に雷が落ちなくても落雷の影響で電気錠が故障することがあります。今回は、落雷で電気錠が故障する原因や落雷で電気錠が故障したときの症状、落雷による電気錠の故障に備える方法、落雷時に適用される保険について解説します。落雷はわたしたちの身近で起こる自然災害で、決して他人事ではないので参考にしてください。
◎電気錠の構造
電気錠とは、配線による電力で開けたり閉めたりする鍵のことです。電気錠は「電気錠本体」「操作部」「制御部」で構成されており、通常はオートロック機能によって常に鍵がかかっています。一般的なドアと同じように扉についている錠前の部分が「電気錠本体」です。通常のドアについている鍵は「ラッチ」と呼ばれる鍵を開け閉めするカンヌキを室内側のツマミを回したり外から物理鍵で回したりして動かしますが、電気錠はこれを電気の力で動かしています。オートロックを解除するために、暗証番号やカード、リモコン、タッチキーなどを使って認証させる場所が電気錠の「操作部」です。暗証番号式の電気錠であれば数字を打ち込むためのテンキーがあり、カード式であればカードリーダーが、リモコン式であればリモコンの電波を受信するための受信機、タッチキーはタッチボタンがついています。この操作部は暗証番号を忘れたりカードやリモコンを失くしたりして開けられなくなった場合のために、物理鍵でも解錠ができるなど複数の解錠方法を備え付けることが可能です。電気錠の制御部は、操作部で実行したオートロック解除の命令を電気錠本体に伝える役割をする部分で、電気錠全体を機能させるための司令塔といえます。電気錠にはさまざまなメリットがありますが、そのひとつはキーレスの実現です。暗証番号式では数字をテンキーに入力するだけで解錠できるので、鍵を持ち歩く必要がありません。鍵を持ち歩かないため鍵の紛失や盗難の恐れがなく、不正な複製もできません。電気錠のメリットの2つ目は高い防犯性です。オートロック機能で自動的に鍵がかかるので施錠忘れの心配がありません。ゴミ出しなどのほんの短時間の無施錠を狙って侵入される空き巣被害が多く発生していますが、オートロック機能があればこのような空き巣にあう恐れがありません。そして鍵穴がないためピッキングなどの不正解錠もできないので、非常に防犯性が高い鍵が電気錠です。しかし電気錠の非常に高い防犯性がデメリットになってしまう場合があります。オートロック機能で施錠されているため、暗証番号を忘れたりカードやリモコンを失くしたりなど認証手段を失うと締め出されてしまいます。また電気錠は電気で動く鍵なので、停電時など電気が不通のときには使えなくなってしまいます。しかし電気錠が操作できなくなってしまったときに備えて、ほとんどの電気錠には物理鍵でも解錠できるように非常用のシリンダーがついています。
◎落雷で電気錠が故障する理由
雷とは雲のなかで発生した電気が大気中で「放電」する現象のことです。落雷というと「樹木に雷が落ちて燃えた」や「鉄塔に雷が落ちた」などのように直接的に雷が落ちることをイメージする方が多いかもしれません。このように直接的に落ちる雷を「直撃雷」と呼びます。一方、付近の建物や樹木に発生した直撃雷によって電線や通信線などに発生する大きな電流や電圧が「誘導雷」、建物や地面への落雷によって地面から雷の一部が伝わって屋内に逆流する電流や電圧を「逆流雷」といいます。この直撃雷や誘導雷、逆流雷によって発生する「雷サージ」が、電気錠に影響を与えて故障につながります。雷サージとは落雷が起こったときに一時的に引き起こされる、異常に大きな電圧や電流のことです。雷サージの過剰な電圧や電流が電線やケーブルなどを伝って屋内に流れ込み、電化製品や電気錠などにダメージを与えて故障させる原因となります。つまり、周囲で起こった直撃雷の影響で誘導雷や逆流雷を起こして雷サージが発生するため、建物に直接雷が落ちていないにも関わらず電気錠が故障することがあるのです。しかも直撃雷よりも誘導雷や逆流雷による被害のほうが圧倒的に多いのです。落雷による雷サージは、電線やケーブル線を伝って屋内に流れ込んでくるため、電気錠だけではなくテレビやパソコンなどの電化製品も同じように故障しやすくなります。電気錠だけが故障して、ほかの電化製品が故障していなければ「電気錠の故障は落雷の影響ではないのかな」と思われるかもしれません。しかし、落雷による故障は電気錠だけにしか起こらない場合もあるのです。電気錠が設置されている玄関ドアは外部や地面に接しているため、逆流雷による雷サージを受けやすい状況にあります。ですから電気錠は屋内にある電化製品よりも落雷による被害を受けやすく、電化製品には異常がないのに電気錠だけが故障するという現象が起こるのです。
◎落雷で電気錠が故障した場合
大雨が降って雷が鳴った後などに、電気錠が故障して使えなくなってしまうことがあります。「リモコンの電池が切れたのだろうか」「ブレーカーが落ちたかな」などと考えることもありますが、実は落雷の影響によって電気錠が故障した可能性があります。付近での落雷によって発生した異常な電圧や電流の雷サージが、電線を伝って電気錠へ流れ込むことで故障するからです。落雷によって電気錠が故障すると電気錠にカードをかざしたりリモコンを操作したりしても解錠や施錠ができないなど反応がなくなることがあります。そのほかには電気錠の制御盤の電源が切れたまま入らなかったり、電気錠本体や操作部が反応しなかったりなどの症状が起こります。落雷の影響による電気錠の故障の原因が、基板がショートしたりヒューズが飛んでしまったりしたことであれば部品交換などで簡単に修理できることがあります。しかし、落雷で配線に不具合が起こっていた場合の配線工事や電気錠一式の交換工事などをしなければならないときは、電気工事の有資格者がいる専門の鍵業者でなければできません。「落雷で電気錠が故障したかもしれない」ときは電気錠の専門業者へ調査や修理の依頼をしましょう。
◎落雷による電気錠の故障に備えるために
落雷は予測が難しく、極めて短時間に起こる自然災害です。そして落雷を起こさないことはできないため、落雷が起こった際に電気錠への影響を最小限にするための対策が重要です。そこで、電気錠が故障しないようにする対策や故障をしてしまったときの対処法について解説します。雷の被害から建物を守るための設備として「避雷針」を思い浮かべる方は多いでしょう。避雷針とは直撃雷から「建物」を守るための設備で、高さが20m以上ある建物に設置が義務付けられています。これは建物の高いところに設置した避雷針に落雷させて地面へ放電し、「建物」への被害を防ぐ設備です。対して電気錠などの「機器」を落雷による雷サージから守るために効果的なのがSPDです。SPDとは、サージ防護デバイス(Surge protective device)という、雷から機器を保護するための装置で「避雷器」「保安器」「サージプロテクター」などとも呼ばれます。SPDを電気錠への電源線の途中に設置すると、仮に雷サージが発生したとしてもSPDから先へは侵入せず、迂回して直接アース線に流すので電気錠には影響がありません。家庭用であれば分電盤の空いている予備スロットに差し込むだけの簡単なタイプのSPDが売られています。侵入してきた異常な電圧を遮断するSPDは、電気錠だけではなく建物内のパソコンやエアコンなどの電化製品にも効果があります。ただし分電盤用なので電気の線に対してのみ有効で、電話線やテレビアンテナなどから侵入する雷サージは防げません。落雷による雷サージの影響で電気錠が故障した場合は、家のなかに入れなくなってしまいます。そこで、落雷による電気錠の故障でオートロックが解除できなくなった場合に備えて、非常用の物理鍵を持ち歩くことも対策のひとつです。鍵を持ち歩くのが面倒な場合は同居していない家族や親せきに物理鍵を預けておくこともおすすめです。落雷に限らず電気錠の故障に備えて、万が一のときに中に入れるよう備えておくことが重要です。
◎電気錠の落雷故障に火災保険は使える?
落雷による雷サージが原因で電気錠が故障してしまった場合は修理をしなければなりません。部品の交換だけですむ場合もありますが、故障の程度によっては配線工事のやり直しや電気錠一式の交換をしなければならないこともあり、多額の費用がかかることも考えられます。皆さんは落雷による電気錠の被害に火災保険が適用される場合があることはご存じでしょうか。火災保険は火事のためだけの保険ではありません。火災以外にも台風や洪水、雪、そして落雷による損害も火災保険の対象となります。火災保険は加入時に「保険の対象」を選び、保険の対象物が損害を受けた場合に保険金が支払われる制度です。この「保険の対象」は窓や屋根・物置・カーポートなどの「建物」と、家具・電化製品・衣類などの「家財」とに分けられています。保険の対象が「建物」のみの場合と「家財」のみの場合、そして「建物」と「家財」両方の場合があり、加入している保険の内容によって保険金が支払われるかどうかが違います。「建物」とは、家屋そのものに加えて建物に取り付けられているものが対象となるので、建物と一体となっている電気錠の他にエアコン・システムキッチン・畳やフスマなども「建物」の補償範囲です。保険の対象に「建物」が含まれていれば、落雷によって故障した電気錠の損害については保険金が支払われます。保険の対象が「建物」のみで「家財」が含まれていなければ、同じく落雷が原因で故障したとしても、パソコンや冷蔵庫などの電化製品は補償対象外です。保険の対象物は火災保険の保険証券に記載されているので、落雷の被害に備えて1度確認をしておきましょう。火災保険で落雷による電気錠故障の損害保険金を請求する際の書類には「落雷の事実がわかる証明書」が必要です。しかし、地震や洪水などの罹災証明のように公的機関からは落雷に関する証明書は発行されないため代替え書類を用意します。代替え書類としては「気象庁や気象台が提供する観測情報」「電力会社の雷による停電照明」「電力会社等のホームページで提供されている落雷情報のページを印刷したもの」「新聞記事」のいずれかです。また、保険会社によっては電気錠を修理する業者の見積書や領収書に「落雷が原因」であることの記載を求められることもあるので、修理依頼をする前に「落雷による保険請求をするので記載してほしい」旨を伝えておきましょう。なお、火災保険の保険金請求には期限があります。保険金請求は保険法で3年と定められているため、後で請求しようと思っているうちに忘れないように注意してください。また請求期限の3年以内であっても、落雷から時間が経てば経つほど認められにくくなるので、落雷によって電気錠が故障したときの保険金請求はできるだけ早めに行いましょう。「保険を使うと自動車保険のように保険料が上がるから使いたくない」と思う方もいるかもしれません。しかし、自動車保険は等級制度が用いられているので保険を使うと翌年の保険料が上がりますが、火災保険の保険料は保険を使ったからといって上がることはありません。また火災保険は掛け捨てで契約満了時に保険金が戻ってくることもないので、保険が使えるときはできるだけ使っておくことをおすすめします。落雷が原因で電気錠に少しでも損害が出たら、火災保険を上手に活用して修理をしましょう。
◎まとめ
落雷は私たちの身近で頻繁に起こる自然災害です。突然の落雷被害から電気錠を守るためにも、普段からの備えや被害にあったときの対処法を理解しておくことが重要です。そして、万が一電気錠が故障した際には部品や電気錠本体の交換などの修理が必要です。電気錠の修理には高額な費用を要することもありますが、火災保険を上手に使って修理費用の負担を軽くすることができます。カギ舎は、電気錠の工事に必要な有資格者が在籍する電気錠の専門業者なので、落雷による電気錠故障でお困りの方はぜひご依頼ください。また落雷が原因かどうかわからないという方でも、無料で調査をいたしますのでお気軽にお問い合わせください。