ビジネスホン遠隔の仕組み
「オフィスで使っているビジネスホンを遠隔地の拠点とも共有したい」「遠隔地の拠点と内線通話ができたら通信コストを削減できるのに」など考えたことはありませんか?ビジネスホンは同じフロアや同じビル以外の遠隔地でも共有することが可能です。この記事では、ビジネスホンの遠隔の仕組みや概要、ビジネスホンの遠隔に使用するIP電話・VPNのメリットとデメリット、テレワークに活用できるビジネスホンについて解説します。
◎ビジネスホンの遠隔の仕組み
一般的に家庭などで使用する電話回線には「アナログ回線」や「デジタル(ISDN)回線」があります。アナログ回線やデジタル回線は基本料金や通話料金が高く同時に通話できる数(チャンネル数)が1・2chと少ないため、企業で使うビジネスホンにはIP電話が適しています。IP電話とはインターネットを利用した電話回線のことで、インターネットサービスプロバイダが提供する専用の回線を使用します。複数のチャンネル数を使えるうえに基本料も安く通話料も全国一律なので、遠隔地に多くの拠点を持つ企業におすすめです。オフィスにおいて外線や内線・保留・転送などビジネスにおけるさまざまな機能がある便利なものですが、同じオフィスのなかでしか使えないことはなく、本社と全国にある支店や営業所などの遠隔地でもネットワークでつなげることで同時にビジネスホンの機能を使うことが可能です。ビジネスホンは、同じビジネスホン主装置に接続された電話機で外線や内線を共有するシステムですが、遠隔地にある支店や事業所などの場合はどうでしょうか。遠隔地にある拠点の電話機は物理的に本社のビジネスホン主装置に接続することはできないため、本社のビジネスホン主装置と遠隔地の主装置をネットワークで接続することで、同じオフィスにいるかのようにビジネスホンの機能を使えることができます。本社と遠隔地の拠点とのネットワーク構築にはVPN(Virtual Private Network)を用います。VPNとはインターネット上の仮想の専用線を使ってデータを安全にやりとりする通信方式のことで、既存のインターネット環境を使った「インターネットVPN」のほかに、通信事業会社の提供する「IP-VPN」「エントリーVPN」などがあります。インターネットVPNは既存のインターネット環境を使うため、コストを抑えられるメリットはありますが、通信事業者の提供するVPNサービスと比べると不正にアクセスされるリスクがあります。通信事業者が提供するVPNサービスはコストがかかりますが、契約した人しか使えない専用回線を使うので外部からの不正なアクセスを防ぎ、盗み見や改ざんなどをされる恐れが少なくなっています。VPNはセキュリティ対策として「トンネリング」「暗号化」「認証」が設定されているため、より安全に遠隔地のビジネスホンとの接続が可能です。トンネリングとは本社と遠隔地の拠点で通信データのやり取りをする際に、仮想のトンネルを作り外から見えないようにデータを送受信する機能です。トンネルのなかを通るときには、万が一侵入者があっても途中で中身を見られないようデータを包み込むようにカプセル化されます。さらにそのデータに鍵をかける「暗号化」によって盗聴されても暗号鍵がわからない限りその中身を知られることはありません。データを送信する側と受信する側がそれぞれ正しい相手だと確かめるためにはIDとパスワードなどを使って「認証」されるので、データが守られて安全に通信ができます。
◎IP電話・VPNのメリット
IP電話やVPNのメリットは通信費の削減や遠隔地にある拠点とのビジネスホン機能の共有です。本社のほかに営業所やサテライトオフィス、工場、事業所など遠隔地に拠点を多く持つ企業において、電話連絡にかかる通信費は少なくないでしょう。NTTのアナログ回線やデジタル回線を利用したときの通話料は、平日の昼間で市内料金は3分8.5円、同一県内の20~60kmと遠隔地になると1分30円です。たとえば20~60kmの距離がある遠隔地の事業所に1回3分の通話を1日に10回かけたとします。30円×3分×10回なので900円、1事業所だけにかかる通信費が1カ月あたり約20,000円もかかる計算となり、遠隔地の拠点が多いほどビジネスホンの通信コストがかかります。アナログ回線やデジタル回線は、音声をメタル(銅)線にのせて通信をおこなうため、遠隔になればなるほど通話料金は上がりますが、ビジネスホンで使っている電話回線をIP電話に変更することで通信費の大幅な削減が可能です。IP電話はインターネットというネットワークを利用しているので電話線のように距離によってビジネスホンの通話料が変わることがなく、全国一律で3分8円程度です。また同じプロバイダを利用しているところへのビジネスホンの通話料金は無料となるので、遠隔地にある拠点の数が多い企業は大幅な通信費削減に役立ちます。ビジネスホンの機能のひとつである「内線通話」は同じ主装置に接続された電話機同士が主装置を経由して通話をする機能で、離れた部署や違うフロアでも通話料金は発生しません。VPNで本社のビジネスホンの主装置と遠隔地の主装置を接続することで、遠隔地にある拠点でも内線通話が可能になるので通信費の削減に効果的です。ビジネスホンの内線で通話ができるため本社の営業本部から遠隔地の営業員に連絡をしたり、遠隔地にある営業所の所長同士が電話をしたりなどする際に、これまでのように通話料金を気にする必要がありません。またVPNでビジネスホンの主装置を接続すると遠隔地であっても同じフロアにいるかのようにビジネスホンの便利な機能を使うことができます。地方のお客様から本社にかかってきたお問い合わせの電話を遠隔地の営業所にビジネスホンの内線で取り次いだり、逆に遠隔地の事業所にかかった苦情電話を本社の専用窓口に回したりなど、その都度お客様に別の電話番号を案内しなくてもそのまま取り次ぐことが可能なので顧客満足度もアップします。またビジネスホンでは外線電話を共有できるので、遠隔地の事業所が本社の電話番号を使って外部に電話をかけたり、本社の人間が地方の拠点の電話番号で遠隔地の取引先に連絡をしたりすることもできるようになります。

◎IP電話・VPNのデメリット
通信費の削減や遠隔地の拠点との電話共有ができるIP電話やVPN接続ですが、デメリットも存在するので、そのデメリットもしっかりと把握したうえで導入を検討してください。IP電話はインターネット環境を利用した電話サービスなので、モデムやルーター、LANケーブルなどを利用しますが、これらの機器が故障したときはインターネットへ接続できないため、ビジネスホンが使えなくなる恐れがあります。また、インターネットサービスプロバイダ側に障害が起こったなどの接続トラブル時にもビジネスホンが使えません。通信に銅(メタル)線を使っていた従来のアナログ回線やデジタル回線には一定の電気が流れているので停電時でも通話が可能ですが、IP電話は電源を必要とするため停電時には使用できません。その他に「110番」や「119番」などの緊急電話や「0120」から始まるフリーダイヤル、「0570」から始まるナビダイヤルなどもかけられないので注意が必要です。これらの対策としてアナログ回線やデジタル回線を残しておいて、IP電話ではかけられない番号への発信や災害による停電時にも通話ができるように備えている企業も多くあります。IP電話の電話番号は「050」から始まっており「東京03」のように市外局番がないため、かつては「050番はなんだか怪しい」などという悪いイメージもありました。しかし最近では050番が広く浸透しており大手の企業でも使っているところが増えたことから以前のように050番への抵抗は薄れています。インターネット環境を使ってネットワークを構築するVPNによる接続は、遠隔地の拠点ともビジネスホンを共有できるというメリットがある一方で、通信によるセキュリティリスクがゼロではありません。とくに公衆網を利用するインターネットVPNは外部からの不正アクセスのリスクも考えられることを理解しておきましょう。またVPN接続のなかでも既存のインターネット環境を使って接続するインターネットVPNの場合は、時間帯によっては混雑するため通信速度が落ちてしまうことがあります。あまりにも通信速度が遅いようであれば通信事業者が提供するVPNサービスに切り替えるなどの対応がおすすめです。VPNを導入するにはVPNの種類にもよりますが大きくコストがかかる場合もあります。既存のインターネット環境を利用するインターネットVPNは専用ルーターの購入だけですむので比較的安価ですが、通信事業者が提供するVPNは専用ルーターに加えて初期費用や月額の基本料金などの運用費用が必要です。

◎テレワークは会社のビジネスホンを活用
ネットワークを利用してビジネスホンを活用できるのは支店や営業所など遠隔地の拠点だけではありません。自宅でのテレワークに会社のビジネスホン専用電話機を使うことが可能です。テレワークを推進する企業が増えている昨今ですが、実は自宅でのテレワークには電話にまつわる問題が多くあります。たとえば、社外からの外線電話はオフィスにいる人間しか受けることができないため、外線電話をオフィスにいる少ない人数で対応したり、在宅勤務者宛てにかかってきた電話の用件を電話やメールで連絡したりなどと、電話応対だけでもかなりの時間と労力を要してしまうことになります。また自宅でテレワークをしている在宅勤務者は、携帯電話でお客様や取引先に連絡をしなければならないため、個人の携帯電話であれば「通話料金を負担しなければならない」「個人の電話番号を知られたくない」という問題が発生します。社外の人との連絡に携帯電話を使うことが当たり前になると、休日や時間外でも電話がかかるようになってしまい、「仕事とプライベートの区別がなくなるから会社の電話を使いたい」と思う人も多くいます。このような電話にまつわるテレワーク問題を解決するために、会社のビジネスホンを自宅に持ち帰って遠隔で利用するという方法が注目を浴びています。会社のビジネスホンを自宅でのテレワークで使うためには、遠隔地の拠点とネットワークで接続するのと同様にVPN(Virtual Private Network)を使います。VPNは専用の仮想トンネルの中をカプセル化、暗号化したデータを送信するので、不正なアクセスによって盗まれたり改ざんされたりすることのない技術です。遠隔地でもビジネスホンが使えると、会社にかかった外線をオフィスにもテレワーク先の自宅にも同時に着信させられます。会社のビジネスホンには誰からかかったかが表示され、担当者がテレワーク中でも自宅のビジネスホンからすぐにその電話に出られるのでスムーズな顧客対応が可能です。自宅で受けた電話をビジネスホンの内線機能を使ってオフィスの人間に取り次いだり、オフィスにかかった電話を自宅でテレワークをしている在宅勤務者に内線で取り次いだりもできます。またふだんから使い慣れているビジネスホンをそのままテレワークでも使えるので業務効率が下がりません。ビジネスホンには顧客や取引先の電話帳や発信履歴などが登録されているので、テレワーク先でも電話連絡がスムーズにおこなえます。またビジネスホンを使うと会社の電話番号として発信ができるので、通話料金の負担もなく個人の電話番号を知られることもありません。インターネット環境とVPN専用のルーターがあればどこでもビジネスホンが使えるので、自宅でのテレワーク以外にもサテライトオフィスやシェアオフィスなどの遠隔地でも場所を選ばずに会社のビジネスホンを使って効率的に仕事ができます。

◎まとめ
ビジネスホンは遠隔地にある拠点や、自宅やサテライトオフィスなどオフィス以外の場所でも使えることや、ビジネスホンを活用して通信費の削減ができることなどについて解説しました。遠隔地に拠点を持ち通信費削減や電話機能の共有などに興味がある方にはビジネスホンがおすすめです。遠隔地の拠点間とどのようにネットワークを構築したらよいか具体的なイメージがわかない場合はカギ舎の専門スタッフが調査の上、最適なビジネスホンのプランをご提案いたします。また、遠隔地の拠点間でのネットワーク構築に必要な機器やお手続きについても、ご相談を承りますので、まずはお気軽にお問い合わせください。